『神曲奏界ポリフォニカ インスペクター・ブラック』
神曲奏界ポリフォニカ インスペクター・ブラック (GA文庫)
- 作者: 大迫純一,BUNBUN
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2006/06/14
- メディア: 文庫
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以下、ネタバレあり。
実は最初も最初で犯人が誰なのかはわかってしまう。が、その殺害方法と動機までは明かされないため、その2つを明らかにするのが主人公であるマナガとマティアに与えられた役割。……なのだけど、はっきり言って2人の捜査は見ていて爽快なものではない。2人は刑事ゆえ時には法を少し踏み越えたり、ユニークな手を使って証拠を集め、犯人を逮捕するのだろう、なんてタカをくくっていると手痛いしっぺ返しを食らう。彼らの捜査は「刑事コロンボ」や「相棒」に近い。重要参考人の元に何度も通って証言の食い違いや矛盾をつついたり、時にはまったく見当違いの考察を披露して恥をかいたり。実に泥臭い。よくありがちな推理モノや刑事ドラマのような「確実に犯人を追い詰めている感じ」もほとんどない。しかもそんな調子だから読者は推理もままならない。で、そこで気がつく――「ああ、この小説はミステリーでも刑事ドラマでもない。ただ単に事の成り行きと人間模様を描いているだけ」なんだと。逆にクライマックスで全ての謎が解けた時のカタルシスはなかなかのもの。多少急進的な感はするけれども、「なるほどそう来たか!」というような。ただこういうストーリーの展開の仕方は読み手を選ぶかも。上記の通り、2人の刑事が主人公だからってハリウッド的な展開を期待したり、エンターテイメント性を求めると読めない。2人の活躍とも言えないような活躍を“見守る”事のできる人にはおすすめ。