第309飛行隊 C格納庫

卯月薫(うづき・かおる) アマチュア小説書き&ゲーム実況(はてなプロフに各URLあり〼)。マンガ、アニメ、映画、小説、ミリタリー、警察、TRPG、猫、ゲームなど。たまに自炊画像。  ※注意※  不適切なコメントは予告なしに削除する場合がありますのでご了承下さい。リアルの常識などは言うに及ばず、ネチケットもしっかり守りましょうw since 2005.12.22 当ブログはAmazonアフィリエイトを利用しています。

『神曲奏界ポリフォニカ インスペクター・ブラック』

某友人が『〜クリムゾン』を読んでいるので対抗して『〜ブラック』を読んでみました、なんて事はまったくなく(笑 単純に私にはこっちのキャラ設定のほうが合ってるな、と思ったから読み始めてみた。読み始めてみたらなんとまあ想像と違う事違う事。読み始めた当初はその“予想外”が不快でたまらなかったのだけど、「自分は小説を読んでいる」という認識を捨てたら案外あっさりと楽しめるようになった。同時に「この作者凄いな」とも思えるようになったのだけど(苦笑
以下、ネタバレあり。
実は最初も最初で犯人が誰なのかはわかってしまう。が、その殺害方法と動機までは明かされないため、その2つを明らかにするのが主人公であるマナガとマティアに与えられた役割。……なのだけど、はっきり言って2人の捜査は見ていて爽快なものではない。2人は刑事ゆえ時には法を少し踏み越えたり、ユニークな手を使って証拠を集め、犯人を逮捕するのだろう、なんてタカをくくっていると手痛いしっぺ返しを食らう。彼らの捜査は「刑事コロンボ」や「相棒」に近い。重要参考人の元に何度も通って証言の食い違いや矛盾をつついたり、時にはまったく見当違いの考察を披露して恥をかいたり。実に泥臭い。よくありがちな推理モノや刑事ドラマのような「確実に犯人を追い詰めている感じ」もほとんどない。しかもそんな調子だから読者は推理もままならない。で、そこで気がつく――「ああ、この小説はミステリーでも刑事ドラマでもない。ただ単に事の成り行きと人間模様を描いているだけ」なんだと。逆にクライマックスで全ての謎が解けた時のカタルシスはなかなかのもの。多少急進的な感はするけれども、「なるほどそう来たか!」というような。ただこういうストーリーの展開の仕方は読み手を選ぶかも。上記の通り、2人の刑事が主人公だからってハリウッド的な展開を期待したり、エンターテイメント性を求めると読めない。2人の活躍とも言えないような活躍を“見守る”事のできる人にはおすすめ。