第309飛行隊 C格納庫

卯月薫(うづき・かおる) アマチュア小説書き&ゲーム実況(はてなプロフに各URLあり〼)。マンガ、アニメ、映画、小説、ミリタリー、警察、TRPG、猫、ゲームなど。たまに自炊画像。  ※注意※  不適切なコメントは予告なしに削除する場合がありますのでご了承下さい。リアルの常識などは言うに及ばず、ネチケットもしっかり守りましょうw since 2005.12.22 当ブログはAmazonアフィリエイトを利用しています。

『キノの旅―The beautiful world』

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

私が「キノの旅」というキーワードと出会ったのは確か中学生の頃だったと思う。その頃の私は週末は深夜ラジオを聴くのを習慣にしていて、その時に「キノの旅」と出会ったのだ。番組名は忘れてしまったけれど、土曜の夜に電撃文庫に始まる電撃レーベルの紹介なんかをする番組でアニメDVDか電撃hpの宣伝だったろうか。思い出せばもう10年近く前の出来事なんだなあと感慨に浸る一方で、なぜ今これを読む気になったのかと言えば、それはひとえに私がバイクに乗るようになったからであるのは間違いない。*1もっとも、事前知識や想像とは全然違うストーリーだったのだけれども。ただバイクに乗って旅をして現地で出会った人々との悲喜交々な展開を楽しむ小説じゃなかったんだなあ。
以下、ネタバレあり。
短編形式で語られる旅路は、つまりは人々のエゴで出会う旅なのだ。この作品は全て人間のエゴを題材にしている。行く先々で出会う人達のエゴに対し、キノは自身の感想や意見を述べこそすれ、基本的には何もしない。恐らく真にエゴと向き合うというのはそういう事なんだろう。口先でそれを否定するのは簡単、しかし正すのは至難を超えて究極。中途半端ではいけない。綺麗事でもいけない。ましてや正すなんて行為自体が新たなエゴの押し付け。人間は果たしてエゴを切り離す事ができるのか? 否、生きている限りそれは不可能。*2わかっていたつもりだったけれど、改めてこうして見せつけられるとなかなか辛いものがある。しかしこれは「無知の知」というやつなんだろう。自身がエゴイストである事を知る者はそうでない者とは違う行動を取る事ができる。自覚があるかないか。これはエゴ以外、つまり私達の身近な事象にも言う事ができる。たとえば自分が活字中毒なのかそうでないのかとか(苦笑
正直読後はかなりよろしくないけれど続きが読みたいと思わせる1冊。アニメも見てみたいな……。

*1:購入のきっかけはラジオで名前を知って以降、某友人と何かの小説の話をしていた時に「キノは実は女」なんて話題に話が及んだ事だと思う(たぶん、よく覚えていない)。

*2:この本の“世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい”というフレーズはこの辺りを指しているのかしらん?