『クロス・ゲーム』
- 作者: 中野順一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/07/21
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
一方、東京で小谷昌巳(こたに・まさみ)とヤミ金業を携わっていた本田沙也加(ほんだ・さやか)は、彼らの会社――名を光ファイナンスといった――の社長である妹尾光彦(せのお・みつひこ)が何者かに殺害されたとの報を受ける。遺体を確認して軽くショックを受けはしたものの、まがいなりにも恋人だった光彦ため、そして何より自己保身のために、沙也加は小谷と共に犯人を捜し始め、ある真相に至る。そして、その真相を確かめた時――彼らはある人物と出会う。
遠く離れていた点だったはずの2つの事件が交わる時、ネットゲーム“ソロモン2”で交わされた殺人計画が、その姿を現す。
こういう風にクライマックスで話が物語の最前半の伏線に繋がる展開って大好きなんだけど、なんというか、読者に親切でない小説だな、と思った。展開もアンフェアだし。まあ、ミステリーだから読者が謎を解けないようにできているのかもしれないけど、それにしたって、それはないだろ! という部分が多すぎる(もっとも、消去法を使うと自然を犯人がわかってしまうのだが)。それと、装丁と本の内容とが致命的と言っていいほど合っていないのもさる事ながら、題名とストーリーも合っていないなあ、と。
以下、読了した当時の感想(なるべくネタバレしないように書くけれど、勘のいい人は本を読んだ時にわかってしまうかもしれない)。
- なんか本の帯だけ読むと、遠距離恋愛がもとで破滅していく男女を描いた小説のように思える。というか、そうだと思っていた。
- 別にオンラインゲームじゃなくてもよかったんじゃ? 出会い系サイトとか。
- パスワード設定のいらないメールソフト、オンラインゲームなんてないと思う。予めパスを知っていたのなら、その描写を入れるべき。
- もっと犯人Aのハードゲーマーとしての狂気を入れるべき。本当に復讐してやりたいと思っていたのなら、(慎重を期すために交換殺人なんて考えたのに)犯人B(共犯)に殺されてしまうのはおかしい。
- 犯人Bが犯人Aを殺す動機は? そのまま黙って別れてしまったほうが、双方にとって有益だったのでは? クライマックスの、航太の「こいつはもっといいことを(後略)」だけでは説明しきれていない。
- 作中で「完全犯罪」とか言われているけど、一介の(航太、沙也加、双方の)情報屋が簡単に情報(個人情報)を掴めるくらいだから、これは完全犯罪ではない(いずれは警察も気づく)。
- 真実への1つのキーである〈エクスチェンンジ〉というギミックは、キーであるにも関わらず実は効果的な使われ方をしていない。
- 後半の“羽山と松田”には笑った。