第309飛行隊 C格納庫

卯月薫(うづき・かおる) アマチュア小説書き&ゲーム実況(はてなプロフに各URLあり〼)。マンガ、アニメ、映画、小説、ミリタリー、警察、TRPG、猫、ゲームなど。たまに自炊画像。  ※注意※  不適切なコメントは予告なしに削除する場合がありますのでご了承下さい。リアルの常識などは言うに及ばず、ネチケットもしっかり守りましょうw since 2005.12.22 当ブログはAmazonアフィリエイトを利用しています。

アルファ・レッド

祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず
ただ春の夜の夢のごとし
たけき者もついには滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ

そんな言葉が頭に浮かんだ。


15時半前に家を出た。夢店へ行ってXRのフロントブレーキスイッチを診てもらうためだ。結局、スイッチ自体が破損しているという事で、新しいフロントブレーキスイッチと純正フロントライトバルブを発注完了。
その帰り、ちょっと足を伸ばしてポイントα(と私が勝手に呼んでいる)オフロードポイントへ寄ってきた。夢店のついでに行こう行こうと思いつつ、毎度タイムアップで行けなかったからだ。
……のだが。
国道を横切って県道に入る。消えかかった記憶を頼りに、お寺か神社を過ぎた信号のある交差点を左折……って、そのお寺か神社はどこだ!?
私の記憶にあるその建造物はもっと立派なはず、などと思いつつ、それっぽい交差点を通り過ぎる。や、祝日のせいで車も人も多いもんだから、急な針路変更ができなかったのだ。左側に集中するあまり、ひとつ前のの交差点で前を走っていたXJR400かな? が左折しようとしているのに気づかず突っ込みそうになった(曲がりかけたバイクの腹にバイクが激突なんてぞっとしない)し……。
「いかんいかん、こういう時は焦っちゃダメだ」
思い直し、ここは確実に違う、と思えるところまで直進する事にした。5キロもいかないうちに、道は左右にマンションが立ち並ぶアンダーパスになる。どこかに左へ抜けられそうな横道は……ないね。できれば来た道は戻りたくないんだけどな。
ちなみにこのアンダーパスを走るのは初めてじゃないので、一応この先がどうなっているのかは知っていたりする。確か繁華街になっていたはずだ。果たしてそれっぽい看板が見えてきた。
「うん、ここは絶対違う。なぜなら自然にまったく縁がなさそうだからだ」
そうひとりごち、ささっとUターン。幸いアンダーパスは空いていたのであっという間に迷った来た道を戻る事ができた。
が、ここで私の天然がヤラかす。さて、さっきここっぽいと思った所を曲がるぞ、と思ってハンドルを切った先は、なんと住宅街であった。
「あ、ちょ待て! 曲がるのもう一本先の交差点だし! でももう曲がり始めちゃってるし!」
いかに間違いに気がついても、道路のど真ん中で停まるわけにはいかない。XRはそのまま道幅の狭い住宅街に突入し――しかし、Uターンせず。
まあなんだろう、某氏風に言うと私もまた後退のネジがはずれちゃってるバイク乗りだからねw や、わかってる。効率を考えればUターンしたほうが賢明だ。だがね……これはこれでネタになって面白いかな、なんて思っている私がいたりするのもまたじじt(ry
とにかく住宅街である。太陽は出ているので、方角を見失う事はない。といってもたっぷり30分は迷っていたけどね。まあそれはそれで楽しかったんだけれど、道探索はやっぱりXRが適任だ。これがもしCBRだったら、早々にキレちゃってたと思う。まあともかくどこかの古都じゃあるまいし、左右の道が格子状に交わっていると思ったら大間違いって話だ。だって、なるべく同じ道走りたくなかt(銃声


そんなこんなやっとたどり着いたポイントα@やっぱりそれっぽい交差点を左折で合ってた。
入り口から浸食されてごつごつしたコンクリートの路面を下っていく。大方が砂利や土を被っているから、油断しているとハンドルを持っていかれる。何ヶ月ぶりかのスタンディング……いやいや、今日はただの様子見だってば、だから無意識ににやにやするのはやめようか、私。落ち着きなさいって。
進入して少し行った所、過去私がKSRでほとんど減速せずに走り、リアボックスをぶっ飛ばしながら転倒した事のある左からの合流路が完全に草に覆われているのが目に入った。まあ元々土の路面だった所だけどさ……時の流れを感じずにはいられないね。
「また道に戻してやるか、なんちって♪」
冗談とも本気とも取れる台詞を吐きながらさらに下る。この辺りになると下は砂利道に変わっているので、対向車に備えてエンジンブレーキのみを使う。
その先、見えてきた光景――まったく予想していなかったわけではないが、やはり愕然とする
「だよなあ、4年前に既にそんな感じがしてたもんなあ」
着いた先は広場、ここを基点に右へ左へ遊べるポイントへ道が伸びていたのだが。

宅地化の波が、すぐそこまで迫っていた。
もっとも、この画像はこの広場から直接アクセスできる軽いヒルクライムと倒木越えとブッシュランの背中側だけれども。雑木林だったはずの場所。
そしてそれらがあるはずの斜面は

手前側が削られて平らになり、鉄パイプの柵まで施設されていた。左奥へ続く砂の道は、あろう事か新興中宅地に繋がっていたのを実際に走って確認。なんてこった、前はコンクリート土留めで行き止まりだったのに。しかも、新しくできたらしい途中から右へ折れる道は県道に至っていたし。幹線道からの目立つ入り口は、唯一私が入ってきた所だけだったのに……。
4年という歳月がずっしりと私の肩にのしかかる。
もちろん、私がどうこう口出しできる事じゃない。ここは私(と、とーちゃん)が発見する前から“詳しい所在地は記録に残さない、使用する者が良心をもって利用する地主の好意で遊ばせてもらっている場所”だったわけで、土地所有者の考え方が変わればその在り様も変わるからだ。こうなった責任は誰かにあるのかもしれない。誰にもないのかもしれない。そんな事を考えても現状は現状のままだ。そんな事くらいわかっている、大袈裟かもしれないけれど。
ただ――私が知っているオフ遊びのできる場所が近い将来消滅してしまう、その事実がたまらなく悔しいし悲しいし、失望を覚える。
「そういえば通っていた小学校の裏山が住宅地になる事を知った時も、こんな気持ちだったっけ」
立地的にここは住宅地に住む人々の憩いの場になるのかもしれない、バイクが進入する事は叶わないだろう。


気を取り直し、何がどれくらい残っているのか確かめる事にした。
まず広場を右へ折れてすぐ、

高架下の斜面は以前より土が増えたような気もするが、そのままだった。ここはKSRで上ったり下ったりして練習に使っていたのだ。
続いて奥へ進み、オフ中級車に泣きを見せる(らしい)「虎の穴」(と、私ととーちゃんが勝手に呼んでいる)脇道。

ここはいくぶん進入路が優しくなっている。季節のせいもあるかなあ、私ととーちゃんが入った時は夏目前の時分だったし。
「ちょこっと覗くだけ、や、XRではいかないぞ、ソロなんだから」

進むべき方向はふたつ、あえて目印は書かない。この画像を見てそのふたつが見えた、あるいは第三の道が見えちゃったヒトはケモノライドシンドロームという不治の病に感染しているから潔く認めるように。
「今なら路面が乾燥していて難易度低そうに見えるけど、きっとそれは思い違いに違いない」
初めて突入した時は、何やら汚い水の溜まった得体の知れない泥沼にバイクを落としそうになった。2度目は突入こそしなかったものの、同行した我々より熟達者のかみ氏&iroha氏から苦戦したという感想を聞いた。そんな場所が4年でより厳しくなっているこそすれ、ピクニック気分で走れるとは到底思えない。もっとも、後者は午前中ににわか雨の予報が出ていて、現地も実際に降ったと思われる痕跡を見つけての話ではあるが。
脇道も含めて全て走りきったわけじゃないけど……せめてここは宅地化の波をうけていないといいなあ。
開発作業の影響で道が途切れたりなくなっていたり、そういった傷がついていない事を切に願う。
しかし、開発途中とはいえ、このエリアのどこにも「立ち入り禁止」の看板は見つけられなかったりするから不思議だ。4年前に「立ち入り禁止」の看板があった所は、まだそのままなのだろうか。


太陽が沈みかけている。
「虎の穴」の入り口からさらに奥、恐らく200メートルも離れていない所でUターン。
本線自体に特に危険な箇所はない。が、だからといって街灯があるわけでもないので、陽のあるうちに余裕を持って引き返す事にする。
これにて今日の探索は終了。残りは後日、といってもご多分に漏れず脇道もたくさんある。逆言うとその分遊べるエリアという事で、その全てを4年前でさえ攻略しきっていない。
失意と安心が入り混じった複雑な気持ちでポイントαを辞する。裏道を縫って今度は迷う事なく、むしろ「ここ前に走った事ある!」などと感慨を抱きながらやがて国道へ出た。
信号待ちで並んだマスツーらしいバイク乗り達がシグナルブルーと同時にダッシュしていくのを適当に追いながら(無論追いつけない)、ぼんやりとポイントαでの出来事を反芻する。


緑の匂いを含む初夏の黄昏の風は心地よい。私のGWは今日で終わりだ。