第309飛行隊 C格納庫

卯月薫(うづき・かおる) アマチュア小説書き&ゲーム実況(はてなプロフに各URLあり〼)。マンガ、アニメ、映画、小説、ミリタリー、警察、TRPG、猫、ゲームなど。たまに自炊画像。  ※注意※  不適切なコメントは予告なしに削除する場合がありますのでご了承下さい。リアルの常識などは言うに及ばず、ネチケットもしっかり守りましょうw since 2005.12.22 当ブログはAmazonアフィリエイトを利用しています。

『フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life』

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life

スカイ・クロラ』に繋がる最後から2番目の巻。『ナ・バ・テア』以降、物語はずっとクサナギ・スイトの一人称で続いていたけれども、この巻は違う。一応物語そのものは既に後半で何もかもが『スカイ・クロラ』へと収斂していくはずなのだけども……。
以下、ネタバレあり。
この巻の主人公はクサナギの部下であり、のちのカンナミ・ユーヒチであるクリタ・ジンロウ。とくれば本の最後でクリタは死んでしまうのか……と思いきやそれはまったくの見当違いで、かつ『ダウン・ツ・ヘヴン』までの謎はほとんど解ける事なく、むしろ増やしながら終わってしまう。なんだろ、読後がよろしくない。よろしくないぶん、最終巻の『クレイドゥ・ザ・スカイ』で伏線を回収しつつもストーリーを終わらせてくれるんだろうな、と期待する。まあ、それは読んでのお楽しみだけれども。
クリタ・ジンロウが初めて物語の舞台に上がったのは確か『ナ・バ・テア』でだったと思うのだが、『ダウン・ツ・ヘヴン』で登場がなかった間にかなりクサナギへの気持ちを募らせていたらしく、その片鱗が随所に見られる。でもいかにして恋に落ちたのかはよくわからなかった。なんか最初から仕組まれていたような印象さえ受ける。本の後半(中盤?)で2人は離れてしまうのだけど、それでもクサナギを思い続けるクリタの愛情の発端には是非言及すべきだったのではないかと。
この巻の最大の魅力はと問われれば、それはクサナギとクリタの恋――という答えもあるのだけど、他にもう1つ、面白いエピソードがある。新キャラ、サガラ・アオイの存在だ。彼女は「キルドレ」を研究していてその一端としてクサナギを研究していた。その結果明らかになった事実はキルドレの存在意義を根底から揺るがす内容で、これには心底驚かされた。まあ、これに関しては“後付け”の感もしないでもないが、個人的見解としては「だから『スカイ・クロラ』で彼女(クサナギ)は死を選んだのではないか」とも思える。なぜか。クリタ・ジンロウを「もう終わらせてあげたい」*1と思って撃ったクサナギなら“自分に終わりがある”と知った時、その終わりを手に入れたいと思うだろうからだ。そうして彼女は未来、その終わりを手に入れる。
戦闘機に乗って空を飛んで、敵を撃ち落とす――それが全てだった『ダウン・ツ・ヘヴン』までのストーリーはこの巻で急変する。多くの謎を孕んで、キルドレ達の未来を巻き込んで。そしてクサナギとクリタ、2人の人生を狂わせて。キルドレの謎の一端を垣間見たい人にはオススメ。

*1:もっとも、これはミツヤ・ミドリの想像だが。