前に書いた通り前期のゼミで読む事になった本。というか、今や“前期のゼミで読んだ本”。いやー、この本は難解であった。要は主観と客観の話で、「我々は他人の世界の見方を“理解”する事はできても“説明”する事はできない」といったような内容なのだけど、もちろんそんな簡単すぎる要約でこの本の全てが理解できるはずもなく。まあ、とはいえ面白かった事には変わりはないんだけど。他の心理学科の友人や心理学に興味のある人はぜひ読んだらいいんじゃないかと思う。けれど、一般的なその分野の入門書あるいは
学術書として読むとすると、多少面食らう事になる(実際私もそうだった)。なぜかというと、この本は文章自体は非常に日常的な言葉で書かれているのだが、その文章の意味する所を把握するのに結構苦労するというどうにも矛盾するような一面を持っているからだ。それは書く主題の難解さゆえ、というよりは訳者が「訳者あとがき」で述べている通りひとえに訳語の当て方に由来するという事が実際読み進めていくとわかる。まあ、読解力のある人なら慣れてしまえばなんら障害にはならない話ではあるだろうけれども、というのは私の個人的な実感だが。とにかく、表題にもある“
現象学的
精神病理学”というコムツカシイ単語が気にならなくなるほど著者内で扱われる事例は我々の日常生活に根ざしているので、飲み込みやすいのは確かだ。