6年間憧れ続けたモノ
いつか動画を見てみたいと、そう思っていた。といってもこの小説を動画にするのは不可能だと思っていたから大して期待もしていなかったし、自分の愛読書だけに原作を穢すような酷い作品になってしまったらどうしようなんていう不安もあいまって、いつまでもこのまま本でいてくれたらいいのに、と思ったのも事実。
でも、そう思っていたのも公式サイトの予告映像を見るまでで、一度見てからは劇場公開が楽しみで楽しみで仕方がなくなった。そのわりに劇場へ足を運んだのが劇場公開が始まった月の下旬、しかも公開する劇場も時間帯も少なくなってきた頃というのがなんとも私らしくて笑ってしまう。
というわけで(?)本日ついに見てきたぜ映画「スカイ・クロラ」! 端的に感想を述べれば「お金払ってでもいいからもう1度見に行きたい!」。いやあ、久々に素晴らしい映画だった。よくぞここまで(色々な意味で)原作を忠実に映像化したな! DVD発売が今から楽しみですねw(ぇ
以下、少々ネタバレありなので別リンクで。
永遠の命を生きるキルドレのスイトとユーイチ*1の終わりのない永遠の愛。それは現代の若者にとてもよく似ている――なんていうテーマが著者の森博嗣の「言いたい事」だったのかは私にはわからないし、原作を初めて読んだ時の私にそこまでの読解力があるはずもなく。*2だから私は、「スカイ・クロラ」は「生きるって何? そんなに楽しいものなのか?」っていう疑問を読んでいる人に投げかけているのだと思っていた。しかし映画版は劇中のユーイチの
いつも通る道でも、違うところを踏んで歩くことができる。
いつも通る道だからって、景色は同じじゃない。
それだけではいけないのか。それだけのことだからいけないのか。
という台詞に代表される「同じような毎日でも昨日と違う風に生きる(振る舞う)事ができる」という、私が原作に対して持っていたイメージとは真逆のメッセージがこめられていて、正直混乱した。この件に関しては自分の中でもまだ決着がついていないので、この話はこれでおしまい。
えーと、あと書いておきたい事は……そうそう、“空気感”の話。“空気感”というのは「スカイ・クロラ」関係者がよく使っている言葉で、要するに雰囲気の事だ。原作の「このどうしようもなくゆるゆるして単発でぼんやりした感じ」(とでもいえばいいのだろうか)が怖いくらいに映像化されている。これ、なかなか形にするのは難しいと思うんだよね。そういう意味で私は映像化は不可能だと思っていたのに、見事に映画になってしまったから不思議でならない。
それと、どうしてかバイク乗りには親しみの持てる映画だったと思う。ユーイチがミートパイを食べる店の内装なんか、アメリカ中部の砂漠のド真ん中にあって駐車場に何台ものハーレーが止まっているドライブインを連想させる。トキノもドラッグスターっぽいバイクに乗っているし、ユーイチが乗るスクーターはべスパを連想させる。まあ、個人的な意見としては「バイク=陸の戦闘機」だからそう感じるのかもしれないけど。
珍しく原作から入っても映画から入っても破綻する事なく楽しめる作品。以上、感想を書くつもりが雑感になってしまったけれど、高校2年生の時からの夢が叶った、という話。